親知らずの移植とは?メリット・デメリットについても解説
スタッフブログ 2024.06.21
親知らずが残っている人のなかには、失った歯の部分に対して移植の選択ができる場合があります。
条件もあるため、必ずしも選択できる方法ではないのですが、できるだけ自分の歯を残す治療がしたいと思っている人もいるのではないでしょうか。
親知らずの移植にはどのようなものがあるのか、メリット・デメリットも含めて解説したいと思います。
親知らずの移植とは
親知らずの移植とは、口腔内で噛み合わせに機能していない歯を使い移植する方法です。
自分の歯を使い移植することを、「自家歯牙移植(じかしがいしょく)」といい、機能していない歯のことを「提供歯」と呼びます。
そもそも歯が欠損する理由にはさまざまなものがあります。
大きな虫歯や歯周病で歯を失うこともあれば、歯が折れてしまうこともあります。
失った歯の部分をそのままにしていても、噛み合わせに支障が出てしまうこともあるため、ブリッジ・インプラント・入れ歯などで補う治療が必要となります。
親知らずの移植ができる理由
そもそもどうして親知らずを使い移植することができるかというと「歯根膜」が関係しています。
歯は本来、骨のなかに埋まっており、歯と骨を繋ぐ役割を持っています。
この歯根膜のなかには、再生能力の高い細胞が多く存在しているといわれています。
歯を移植することで、再生能力を活性化させるのが目的です。
そのため、親知らずの移植は歯根膜も一緒に移植することで、歯と周囲の骨を繋げるメカニズムがあるといわれています。
親知らずの移植ができる条件は?
親知らずの移植は、誰でもできるわけではありません。
そもそも歯根膜を一緒に移植しようとしても途中で剥がれてしまうこともあり、歯と骨をうまく結合できなくなってしまいます。
なかには癒着がおき顎の骨が異物として判断すると、歯根を溶かしてしまうことも考えられます。
親知らずの移植ができる条件は以下の通りです。
・移植する親知らずの根っこの部分が単純な形をしている
・移植する歯が歯周病にかかっておらず歯根膜が十分にある
・年齢は40歳までの若い世代の人である
・抜歯しなくてはいけない歯が残っていること
などが考えられます。
また、歯のサイズや根のサイズがマッチしていないと移植が難しいケースもあります。
事前に歯の模型やレントゲンをとって、問題なく親知らずに移植ができるか判断しましょう。
親知らずを移植するメリット・デメリット
親知らずを移植するうえで覚えておきたいメリット・デメリットを紹介します。
メリット
・天然歯と似たような機能が期待できる可能性もある
・歯根膜が残っているので食べものの歯触りを感じやすい
・感染やアレルギーなどの心配が少なくなる
・ブリッジよりも周囲の歯を削る範囲が少なくなる
・条件を満たすと保険適用で治療ができる可能性もある
デメリット
・親知らずの移植が選択できない人もいる
・歯のサイズが合わないとスムーズに移植できない
・技術的な難しさもあるため、歯科選びが難しい
・外科手術が必要になり2カ所の部位で行う
親知らずを移植することで、もともと自分の歯であり歯根膜も残っていることが最大のメリットといえます。
周囲の歯に負担をかける心配もありませんし、食べたときの感覚などそのまま得られる可能性があります。
ただ、条件があることやインプラント以上に治療が難しいケースもあるため、どこで移植するのかによっても変わってきます。
適応できるかどうかまずは確認してもらってから、治療として選択できるかどうか、判断するようにしましょう。
親知らずの移植が失敗することもある?
親知らずの移植をしたものの、失敗してしまうケースもあります。
具体的にどのような条件のときに失敗するのか説明していきます。
・プラークコントロールが不十分
・移植した歯をしっかりと固定していない
・歯根膜の細胞が少ないと移植がしにくい
プラークコントロールが不十分
口腔内の環境が悪く、細菌が繁殖している状態では移植が失敗してしまう可能性も考えられます。
歯の定期検診を受けていない人や、痛みや違和感があるものの虫歯や歯周病をそのままにしていませんか。
口腔内に細菌が多いと炎症が起こりやすくなってしまい、移植した親知らずを異物だと判断してしまい排除してしまう可能性もでてきます。
親知らずの移植の前に治療しておくのはもちろん、自宅での口腔ケアのアドバイスも受けつつ正しいブラッシングができるようにしておきましょう。
歯医者にて定期検診を受けることで、初期の段階で見つかりやすくなり治療の負担を減らすことにも繋がります。
移植した歯をしっかりと固定していない
親知らずの移植をすると、一定期間の固定が必要(個人差あり)になります。
移植をするときは、できるだけ安静にしておき顎の骨と歯が結合するのを待たなくてはいけません。
日常生活で食事や会話に困らないようにするため、しっかりと固定し1か月程度様子をみます。
固定がしっかりとできていないと、歯を支える組織の再生がうまくいきません。
固定を行う期間は人によっても異なりますが、1か月程度は気を付けて生活する必要もあります。
また、固定を外すタイミングで受診できるようにスケジュールを立てておきましょう。
歯根膜の細胞が少ないと移植がしにくい
歯根膜は0.2mm程度の薄い膜のことをいいます。目には見えませんが歯根と歯槽骨の間にありクッションのような役割をしているのも特徴です。
食事をするときにかかる力を逃がし、過度な力が入らないように調整してくれています。
歯根膜は個人差もあり、ほとんどない人もいますし細胞の数が少ないと移植が難しくなってしまいます。
例えば、歯根膜に、歯ぎしりや食いしばりが原因で過度な力が入ってしまい「歯根膜炎」となり痛みが出てしまうこともあります。
また、歯周病が進行する歯槽骨が壊れてしまい、歯根膜がなくなってしまうこともあります。
歯根膜がなくなると歯がぐらつくようになり、歯を失う原因になってしまうリスクも考えられるのです。
親知らずを移植した場合、歯の寿命はどのくらい?
親知らずを移植したとき、天然歯は安定しやすく寿命も長いといわれています。
身体にとって異物としての抵抗が起こりにくく、長期的に見てもインプラントに並ぶ有効的な方法としても知られています。
ただ、親知らずの移植には成功しても、状態や噛み合わせ、日々のケアなど清掃状態によって歯の寿命が短くなってしまう可能性もあります。
天然歯と同じケアが必要になるため、定期検診に通い、問題を早期発見、対応できるようにしていきましょう。
歯科医院によっても変わりますが、3か月~6か月に1度定期検診に通うのがおすすめです。
また、移植した歯が抜けてしまったときは移植に再チャレンジできる場合もあれば、インプラントやブリッジ、入れ歯などの欠損補綴治療を行うこともあります。
歯科医院に相談したうえで、適切な方法を決めていきましょう。
まとめ
親知らずの移植は、条件さえ合えば歯根膜を使い天然歯と同じような機能も期待できる治療方法です。
ただし、口腔内の環境によって歯根膜が短くなっていると、移植しても安定せず取れてしまうこともあります。
移植にはメリット・デメリットがありますので、総合的に判断したうえで治療方法の一つとして考えるようにしていきましょう。