『幼児から小中学生まで幅広く診療しております』
お子様の虫歯
乳歯や生えたての大人の歯(永久歯)の虫歯では、通常の永久歯の治療とは異なった特別な配慮と治療方法が必要です。特に乳歯の虫歯はきちんと治療しないと永久歯に悪影響を及ぼす事があります。
乳歯について
乳歯が生える時期は生後5~10ヶ月ぐらいからかわいい乳歯が生え始めます。下の歯から順に生え、3ヶ月くらい遅れて今度は上の歯が生えてきます。全部で20本、生えそろうのは2歳頃と言われています。
乳歯は永久歯に比べ大変弱く、しかも乳幼児の生活は虫歯をつくりやすい条件がそろっています。そのため、周囲の大人が気を付けないと、乳歯はすぐに虫歯になり重症化しやすいのです。
乳歯の特徴
- 歯の大きさ、厚さが永久歯の約1/2
硬いエナメル質や象牙質の厚さが永久歯の半分で、永久歯と比べて弱い歯です。 - 口の中が不衛生になりやすい
乳幼児は歯ブラシをうまく使いこなせず、自分できれいにできません。虫歯菌が活動しやすい環境です。 - 虫歯菌がよろこぶ食事の質と回数
お子様の好む食べ物は、砂糖が使われた甘い物や粘着性の強いものが多いです。その上、食事やおやつなどの飲食回数も多く、口の中が酸性に傾きやすくなります。
このことから、乳幼児のお口は、虫歯の発生しやすい条件が重なります。 - 永久歯が適切な位置に生えるように導く
乳歯は、永久歯が適切な位置に生えるように導く役割があります。ですが、乳歯がたくさん虫歯になって失われると、永久歯を導く担い手がいないので、おかしな位置に永久歯が生えてくるリスクが高まります。
保護者の方へ
虫歯は細菌によって起こる感染症(人から人へうつる病気)です。お子様の歯が最初に生える前、または生えたてに、ご両親のお口の中の環境を良好に(虫歯菌を少なく)しておくことは大事です。そのためには、虫歯の治療と歯ブラシでは落としきれない歯の表面のバイオフィルム(虫歯菌や歯周病菌とタンパク質の膜)をきれいにしておくことが大事です。
当院では小さなお子様もビデオを見たりぬいぐるみと遊びながらご両親の治療をお待ちいただけるキッズコーナーがありますので、お気軽にご来院下さい。また、夜間や土曜日・日曜日も診療していますので、ご主人様がお子様を見ている間にお母様の治療ができます。
また当院では、保育士さんが在中しています。
お母様・お父様が治療中、お子さんが心配な場合、ぜひスタッフに声をかけてください。
お子様の虫歯予防管理について
虫歯は原因菌(強弱及び活動性)、食生活(主に砂糖摂取)、歯の質(強弱)という3要素が絡み合って起こる病気です。これら全ての要素が理想的な場合、理論的には虫歯は起こりません。
虫歯の予防法には次のようなものがあります。
1.ブラッシング(歯みがき):原因菌の減少、清掃
歯磨きは、歯とお口の健康を維持する大事な習慣です。小さいときから、歯ブラシに慣れさせる工夫をしましょう。そして必ず保護者が、年齢に適した歯磨きをしてあげましょう。
- 乳児期:舌に白っぽいかすが溜まります。ぬるま湯で湿らせたガーゼでカスをふき取ってあげます。
- 生後7~8か月:前歯が生えてきています。歯の汚れは乳児のときと同じようにぬぐいます。かみ合う面は入念にします。
- 1歳を過ぎたら:歯ブラシを持たせてみます。慣れさせたら親御さんが磨いてあげます。
- 3歳~5歳:乳歯が全部生え揃います。そろそろ自分で磨かせてみますが、遊びを取り入れて楽しさを感じさせると嫌がりません。親御さんの仕上げ磨きがメインです。
- 5歳~6歳ごろ:毎食後、1日3回の歯磨きを習慣にしてください。6歳頃までには、最初の永久歯(第一大臼歯)が生えます。歯並びやかみ合わせの基本になる歯です。食べかすなどが溜まりやすいので仕上げ磨きも忘れないようにしましょう。
『仕上が磨き』のポイント
お子様だけの歯磨きでは、虫歯の原因となるプラーク除去は難しいです。
必ず大人が「仕上げ磨き」をしてあげましょう。
2.食生活の改善(シュガーコントロール):原因菌のエネルギー源を断つ
虫歯の原因となる虫歯菌の大好物は甘いもの=糖分です。虫歯菌は糖分を食べることで酸を出します。酸を出すことで歯を溶かし虫歯にしてしまいます。虫歯を防ぐためには砂糖摂取量の調整(シュガーコントロール)が必要です。この、シュガーコントロールとは砂糖を摂取しないようにすることではなく、虫歯の原因となる砂糖などの糖類が入った甘い食品の、「食べる量」「食べる回数」「食べるタイミング」を調整することです。
食べる量に注意しよう
チョコレート、飴、アイスクリームやクッキーなど砂糖をたくさん使っているもの以外にも、コーラやスポーツドリンクなどの清涼飲料水にも多くの砂糖が入っています。何気なく口にしている和食の中にも砂糖で味付けした料理が多くあります。このように、知らず知らずに多くの砂糖を摂取してしまっている可能性があるので注意が必要です。
だらだら長い時間食べるのは避けましょう
甘いものをだらだらと食べているとお口の中が酸性に傾いた状態のままとなってしまい、虫歯になるリスクを高めます。また、間食などの回数が多い人や甘い飲み物を長時間かけて飲むことも同様にお口の中が酸性に傾いている時間が長くなり虫歯になりやすくなります。
寝る前に食べるのは控えましょう
寝る前や、睡眠中は唾液の分泌が減少します。そのため、細菌が繁殖しやすくなり虫歯ができやすい環境となります。
例えばその環境の中、寝る前にアイスなどを食べる、飴を舐めながら寝たりすることは虫歯になるリスクが非常に高まります。どうしても食べてしまった場合は、しっかり歯磨きをしてから寝るようにしましょう。
3.フッ素の使用:歯質の強化
フッ化物は歯質を強くするだけでなく、再石灰化を促進します。フッ化物がお口の中に長く残っているほど、再石灰化は促進しますので、ブラッシング後はお口をゆすがないようにするか、ごく少量の水で1回ゆすぐようにすると効果的です。
フッ素とは
フッ素はお茶や海草などにも含まれている成分です。低年齢のお子様にも使用可能です。
人間の身体にも含まれていて「歯や骨の発育に有益な微量元素」として認められています。
フッ素を塗布することにより歯に色が付いたり、黒くなることはありません。
乳歯の生え始めからすぐにできます。(特に歯の生え始めの時期に塗布すると浸透率が高いです。)
フッ素には、むし歯の原因菌の働きを弱め、歯から溶け出したカルシウムやリンの再石灰化を促進し、歯の表面を強化してむし歯になりにくくする働きがあります。では、フッ素はどのように働くのでしょうか?3つの働きで、虫歯の発生と進行を防ぎます。
- エナメル質の修復を促進
酸により歯から溶け出したカルシウムやリンを補うこと(再石灰化)を促進します。 - 歯の質を強化
歯の表面を覆うエナメル質を、酸に溶けにくい性質に変え、ムシ歯への抵抗力を高めます。 - 菌の働きを弱める
ムシ歯を引き起こす細菌の働きを弱め、酸がつくられるのを抑えます。
フッ素は再石灰化を促進します
歯の表面部分であるエナメル質を細菌が産生する酸によって溶かされることを脱灰といい、唾液の作用によりその脱灰されたミネラルが再び戻ることを再石灰化といいます。そのバランスが壊れると虫歯に進行します。フッ素は、カルシウムやリンを取り込んで、歯の表面部分であるエナメル質を修復する作用を持っています。フッ素を応用することで再石灰化を促進し、歯の質を強化することで虫歯の再生や進行を防ぎます。
口内が常に中性であれば、歯の脱灰は起こりませんが、脱灰と再石灰化は1日の中でもめまぐるしく起こっています。
初期虫歯ができてしまっても、フッ素の活用やその他のケアにより再石灰化しやすい状態をつくり出せれば、修復は可能です。初期むし歯が修復されるまでには、半年~1年程度かかるといわれています。ですので、歯科の定期健診が半年に1回以上行うことはとても重要となっております。また、初期虫歯は自分では見つけにくく、歯科医師による定期的なチェックが必要です。毎日のケアでフッ素を取り入れ、定期検診を行うことで継続的に虫歯予防をしていきましょう。
当院ではナルコーム社製の、フッ素イオン導入装置を用いて、よりフッ素が歯に取り込まれやすくする治療を行っております。フッ素イオンの電荷を持っていることを利用し、歯の表面に集まりやすくしたものです。
※フッ素塗布による副作用はございません。
シーラントとは
きれいな永久歯列を育てるのが目的・目標です。特殊なやわらかなレジンを掘りの深い部分に流しこみます。まだ生えたばかりの乳歯の奥歯、永久歯(特に6才臼歯)は、とても凸凹しています。深い堀があり、バイ菌がたまりやすく、歯磨きしても、どうしても食べかすが残ったりします。そのまま放っておくと、すぐに虫歯になってしまいます。特に、お子様の歯や、生えた直後の大人の歯はやわらかいのですぐ虫歯になってしまいます。お子様の歯が虫歯になってしまうと、その次に生えてくる大人の歯にも影響を与え、歯並びが悪くなったりします。
虫歯になる前に、歯の堀の部分をバイ菌が入らないようにうめると虫歯の予防になります。『シーラント』は歯の堀をきれいに掃除して埋めるだけです。シーラントをしたからといって、日ごろの注意や歯磨きを怠ってはシーラントをした意味がなくなります。
以上の予防法が完全に行われれば、虫歯の発生率は半分以下になることはすでに証明されています。
しかし、ほとんど自己管理にまかせている現状では、完全に行われているとは言えません。当院で今行っている予防管理システムは、スウェーデンにおいて驚異的な虫歯の減少をもたらした方法です。現在、大勢の方々が定期的に通っておられます。
具体的な方法は要約すると下記のようなものです。
- 虫歯になっていない歯 : フッ素塗布し、歯質を強化させる
- 虫歯にかかりやすい可能性のある歯(例えば奥の歯の溝が深いものなど) : シーラント
- 食事指導(甘味制限など)を含めた口腔衛生指導、フッ素入り歯磨材使用の確認
- 家庭でのフッ素洗口(毎日法)による歯質の強化、フッ素入りの歯磨材使用の確認
以上のようなことを定期健診(3ケ月毎)の度に行います。理想的には虫歯のできていないなるべく低年齢(1歳ぐらい)から開始するのが望ましいのですが、残念ながら虫歯が出来てから歯科医院を訪れるという今の状況では、治療に訪れた機会にこのような形でしかお知らせする方法がありません。もし、このような予防法を積極的に取り入れようと思われる親御さまは、詳しい内容をお話致しますので、お気軽にお尋ね下さい。
乳歯を抜く時は…
永久歯や全身の健康に良くないときは抜歯する場合があります。生えかわる乳歯とは言っても、やはりできるだけ歯は抜きたくないと思います。しかし、場合によっては抜くことが必要なこともあります。
ひどい虫歯のとき
- 歯に大きな穴が開き、歯髄まで侵されているとき。
- 細菌が歯の根の先から顎の骨に侵入したとき。
- 激痛、腫れ、高熱と歯肉から膿が出るときなど。
病気が骨の中まで進行すると、次に生えてくる永久歯や体全体にまで影響してきます。
ここまで進んでしまった虫歯は治療することが難しく、抜かなければなりません。
ケガで歯が破損したとき
お子様が激しく歯をぶつけた場合は、すぐに来院して下さい!
- 後になって歯が黒ずんできたときは、神経が死んでしまっているので抜歯します。
- 歯が縦に割れてしまったときは、歯を抜かなければならないことがあります。
永久歯の生え方を正しくするために
- 乳歯のわきから永久歯が生えてきたとき
後から生える永久歯の位置に影響し、歯並びがガタガタになるので乳歯を抜歯します。
- 乳歯がなかなか抜け落ちないとき
乳歯の根っこは、後に出てくる永久歯の萌出に合わせて自然に短くなって抜け落ちるのですが、時にはなかなか抜けないことがあります。そんな時は乳歯を抜いて永久歯が適切に生えるようにします。
6歳臼歯(第一大臼歯)は歯並びの『軸』
乳歯から永久歯へ生えかわるとき、最初に生える永久歯が『第一大臼歯』です。6歳前後に生えてくるので『6歳臼歯」とも言います。お子様一人では十分にお口のケアはできません。周囲の大人が気を付けて、第一大臼歯を虫歯から守ってあげて下さい。
第一大臼歯は、歯並びやかみ合わせの良い永久歯列を完成させるうえで重要な役割を果たします。この歯が正しい位置に生えないと、他の永久歯の生える位置に影響し、歯並びやかみ合わせが悪くなります。
こんな時は要注意です!
- 乳歯が生えないうちにわきに生えてきた。
- 乳歯が虫歯で早く失われた。
- なかなか生えてこない。(先天性の歯牙欠損のこともあります。)
6歳臼歯は、虫歯になりやすい特徴があります。
- 生えるまでの期間が長く、手入れがしにくい期間も長くなる。
- 奥に生えているため、歯ブラシが届きにくい。
- かみ合わせ面に細かい溝があり、食べかすが残りやすい。
- 歯肉を被って生えているため、歯肉との隙間に食べカスなどが隠れやすい。
過剰歯と先天性歯牙欠如
私たちの人間の歯の数は、親知らずを除けば、永久歯は28本、乳歯は20本です。ときどき、この歯の数が多かったり、少なかったりすることがあります。
過剰歯(余分な歯が生えている)
過剰氏は乳歯にも永久歯にもあります。小さないびつな形をしていて、中には顎の骨に埋まったままのものもあります。多くが乳歯から永久歯に生えかわる時に出てきます。また、治療のために撮ったレントゲン写真で偶然発見されることもあります。他の歯の成長に悪い影響がなければそのままにしておいて大丈夫です。隣の歯の根を溶かす、歯並びが悪くする、見えない過剰歯が原因で炎症が起こるなど、困った症状のある時は時期をみて抜歯します。
(先天性)歯牙欠如(生えるべき歯がもともとない)
歯が生えてこないと心配して受診したところ、歯になるものが先天的にかけていることがあります。1~2本から部分的にない場合などいろいろあります。食生活の変化による退化減少と考えられており、最近のお子様に多くみられるようになっています。永久歯が多数欠如していると、歯並びやかみ合わせ、お口の機能の発達に問題が起きます。心身の健やかな成長のためにも早めの対応が必要です。